連載第2回


ドイケイコ



様々な人たちが想像や創造する現場を訪れ紹介していきます。



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第1回 Chim↑Pom展『REAL TIME』

第2回 名和晃平―シンセシス

第3回 舞台芸術の現場(1) やなぎみわ演劇プロジェクト 第1部『1924 Tokyo-Berlin』

2011.08.10

名和晃平―シンセシス

名和晃平「PixCell-Double Bambi」2011年

全身を透明の球体で覆われた剥製のバンビ。さまざまな大きさの粒が子鹿の身体から溢れ出しているようにも見える。子鹿は2匹いて後ろのは少し上に位置し、さらに上へ浮かんでいきそうだ。

“2匹”というのは、パソコンでファイルなどを複製する動作「コピー&ペースト」を表現している。しかも剥製はインターネットで取り寄せたと知り、随分現代的だなと、ちょっと熱が冷めた。ただ、その剥製が生々しい亡骸であることを思い出すと、複雑な気分に陥り、新たな想像を巡らせてしまった。

美しくもあるが、おぞましくて不気味。一度に沸き起こる複数の感情は作品への関心を高め、より神秘的に感じさせた。

名和晃平『POLYGON』2010年、2011年

巨大な立体作品を見上げながら、小人になった気分で悠々散歩。中世の彫刻、リモコンを持つ少女、鹿などモチーフについて考えながら歩いていると、先ほどの作品同様、すべて2点以上制作されていることに気づく。ただ、こちらは意図するところが少し違うようだ。

なにもかもが情報化され、ネットワークに「接続」していることが生きている証のようになった今、身体と情報は乖離しながらも相互に補完し合い、一緒になったときの状態が「真の姿」と感じた作者はそれぞれ対で表現した。当たり前過ぎて気付かなった現状を、巨大な作品群に突きつけられた気がする。

作者の名和晃平は、実験的ともいえる新しい彫刻作品を次々につくり出している。それらは観る者に新鮮な衝撃を与え、想像の世界へと誘う。作品の前に立つ、その者にしか分からない、贅沢な個人的体験は日常の見方に影響を及ぼすほど強烈で、一度経験すると病みつきになってしまうだろう。

2011年6月29日『名和晃平―シンセシス』東京都現代美術館にて


『名和晃平―シンセシス』 2011年6月11日~8月28日(日) 東京都現代美術館

名和晃平(なわこうへい)

彫刻家。京都造形芸術大学准教授。 1975年、大阪府生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。98年に英国王立美術院(RCA)に交換留学。キリンアートアワード2003にて奨励賞受賞。個展に『GUSH』(SCAI THE BATHHOUSE、2006)、『AIR』(ノマル・プロジェクトスペース、大阪、06)、『L_B_S』(メゾンエルメス、東京、09)など。第3回バレンシア・ビエンナーレ(05)など国際展への参加多数。第14回『アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ』(10)では最優秀賞を受賞。

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